内野潤子歌集『花芽』

蓮池の枯れ茎の辺に気泡上がりまたしづまれるひと時あらぬ

もの書きの父を思へば世に顕ちしたまゆらの名の何ぞ虚しき

風の如く軽き心の返り来よ師走の冬日千両に照る

 

ものの息づく気配を聴く。

歳月という年輪のさざ波のように、街角を吹きすぎていく風のように。花芽。それは生まれてくる命のひそかな胎動だ。

 

四六判上製カバー装 2600円•税別