田沼百合子歌集『石楠花』

去年庭に夫と愛でゐし虫の音を今宵窓辺に独り聴き入る

戴きしおもひぐさの芽伸び初めて君の面差し重なりて見ゆ

細りゆく聴力の今日は嬉しもよ歌会に友のことば聴き得て

石楠花の精一杯が伝はり来盛り上がるほど白き花鞠

 

亡き夫君への惜別の情、身辺の小動物や植物への慈しみ、友人知人たちへの感謝と敬愛の念、自然の風景へ向ける懇ろな眼差し、それが本歌集の大きな特色である。野地安伯

 

四六判上製カバー装 2625円•税込