志自岐百々代歌集『けやき』

箒持つ父の見上げる大欅掃いても掃いても父の老年

蝋梅の垣より香り来るところ我が魂しばし遊ばせておく

待たずとも季巡りくる春の雪今宵は「小樽のロゼ」を開けよう

紗を伸べし春の雲なりさみしさは捕えどころなきこの薄がすみ

ここだけが里山のあきもえている ベッドのそばの烏瓜三つ

 

リハビリ用の車椅子からみる

〈けやき園〉の芽吹き。

生死の縁から立ち返り、

不死鳥のように、

ナイーブな精神が詠い出す

透明な唄の輝き。

 

A5判上製カバー装 2625円•税込