中井龍彦歌集『憑樹』

霜柱踏みてし行かむ過去世より憑き来たる者われとわが影

人と熊折り合へず棲む森ゆけりどんぐりの唄くちずさみつつ

望郷の想ひも持てず山川にへばりつき棲む苔のごとしも

苦しめる顔のやうなる木の株の洞(ほら)に一輪花を手向けぬ

 

吉野美林の村、黒瀧郷赤滝。代々続く山守の家を継ぎ、過疎化していく故郷を出ることなく、その地から歌を発信し続ける。荒き山人の血脈と純なる詩人の魂魄をもって。

 

青年期を前川佐美雄に、

壮年期を前登志雄に師事した歌人の

霊異に満ちた世界!

 

四六判上製カバー装 2530円•税込