れんこんの穴のごときが中空にうかびてあらむ雪はこんこん
加太の岬青澄む波の片町にパチンコしつつ一日ありけり
「ここへはもう二度と参りません」捨て台詞誰にともなく言ひて出で来つ
シャコタンブルーっていふの 積丹の周子さん来て海の色告ぐ
水差に水注ぐ音のひびきつつ還ることなきこの世の時間
日常の時間とのわずかなズレ。そんな場所が作歌の拠点。
前登志夫の歌弟子の、軽妙、洒脱にして、繊細な作歌世界。
それは詩歌の虚空に浮かぶ一点の不可思議な雲だ。
四六判上製カバー装 2625円•税込