池田晴子歌集『また、あした』

雲ひとつ過ぎたる空に白木蓮の百にあまれる大いなる花

君ひとりわたしひとりのこの重さ厄介なものよ愛といふやつ

空実るごとくに柚子の耀ひて何事もなし何事もあるな

 

本集を読み進むと短歌に向き合って過ごした二十年という時間が、作者の中から連れ出した、新たな自覚、認識、胆力などを目の当たりにする思いがしてくる。誰のものでもない、自分の人生への落し前をきっかりつけようという覚悟と言っても言いすぎではないようだ。久々湊盈子

 

四六判上製カバー装 2625円•税込