木村よし子歌集『冬の雨』

冬の雨しづかに川にふる音を話とぎれし時に聞きをり

果てしなき彼方より低く湧き出づる波は響ける音をともなふ

見つつ来しひと筋の滝わが前にしぶき散らして迫り落ちくる

くもりたる窓につめたき夕方のひかりはほほづき色となりつつ

心すまし引き寄せるごと聞きてゐる己が鼓動か雨のふる音か

 

人とは不思議なものだ。感情は、理性を超えているのであろう。その視点から見て、正直に自らを見つめて、受け止めている短歌といっていいのではないか。

大河原惇行 解説より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込