小林峯夫歌集『五六川』

笑うほか己を救うすべのなき時のあるべしわれにはありき

銀の匙暗むがごとき日日をしずかにさすり生きいるわれか

こんなことやってる場合じゃないものを鍋のしおりをいつまでこする

ジムに通い足使う技上達すたとえばドアを品よく閉める

不正でも大丈夫なやつのいるように大丈夫らしわが不整脈

 

天然の道化、ユートピアとペーソス。時にはシニカルな批評。

妻に先立たれた70代の10年を支え続けたのは、まぎれもなく短歌という勾玉であった。

 

独り身をしなやかに生きる我に張りの男うた。

 

A5判上製カバー装 2730円•税込