木戸敬歌集『無情迅速』

はるかみる銀河は泉これの世とかかはりのなきものみな澄みぬ

父のみるさみどりの山かなしけれ雲くきやかにたちのぼりたり

石にふれ石の時間の聴こえくる石になることいつの日かある

坂下りて坂のぼるときひそやかに人体の臓器暮れてゆくなり

桜よし葉ざくらもよし馬はたつはなびらのながるる馬の時間に

 

やわらかなしらべと、しなやかな抒情。時として純なるたましいの襞に突き刺さる華麗な言葉の棘。

この集一巻を今は亡き父に、そして高瀬一志に、小中英之に捧げる。

A5版上製カバー装 2730円•税込