白石研蔵歌集『玄冬の月』

退院後の痩身を慰籍されて居りラフマニノフのピアノの二番

振りほどき汀へ突進するアキよごらん備前の五月の海だ

五十年共にすごせし祝福をいちにんまえの息子が寄越す

 

白石さんが晩年に聞いたであろうラフマニノフのこのピアノ協奏曲二番を

今、私は聞きながらこの文章を書いている。聞きながら涙が溢れてきた。

音楽にか、白石さんの面影にか、歌にか、それとも「慰籍」という言葉にか、

そのどれかではない、それら全部にである。  青木信 帯文より

 

A5版上製カバー装幀 2730円•税込