冨尾捷二歌集『満州残影』

■平成25年度日本歌人クラブ東京ブロック優良歌集

 

引き揚げ船の仮設便所の暗き穴に玄界灘の荒波を見き

病み飢えし集団生活引揚げを待ちいし我等難民なりき

「生まれては見たけれど」職無き男らの渡りて孤児の生れし満州

「日本が負けた」噂が車内走り抜け列車は満州曠野を疾駆す

お国より渡されし父の形見なり開けて空しき白き骨壺

 

人生の原点と言うべき引揚意見が、モノクロームのドキュメントとして歌われており、切実な衝迫力に息をのむ。

本書は戦後日本、およびすべての日本人の魂の記憶であるとも言える。  谷岡亜紀解説より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込