今関久義歌集『四天木の浜』

片寄りに松の秀なびく雲低し風にあらがふからすが一羽

許されてわれはあるらし妻病むといへども共にけふ望の月

明かすべき人ひとりなし幽囚の思ひに耐へて配膳を待つ

海鳴りの太古の響き入れ替はる大き玻璃の重きを引けば

ちちのみの膝をたらちねの乳を知らず老残一期きはまらんとす

 

自然をそのまま言葉にしているのであるが、えいえいと読みつづけてきたその世界には、いつのときも、反骨精神が息づいているのではないか。  大河原惇行 序より

 

四六判上製カバー装 2625円•税込