足立晶子歌集『ひよんの実』

■平成25年度日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集

 

青空にひよんの実吹いて遠い日の風の中へ中へ行くなり

すこしづづ水を零してゐるだらう震へ止まざる地球は今も

落ちてゆく椿を持つてゐるやうな昼の半月なかぞらにあり

すんすんと青田に鷺をばらまいて天地無用の今日の青空

大切な茶碗が割れておしまひの今日の終りをふつと笑ひぬ

レタス箱におさなご積んで自転車は星かなにかを零してゆけり

 

かぎりなく続く青空。遠い日の記憶のように。

いのちの奥に底光りする純粋なたましいを抱きかかえつつ、

透明な光の輝きにむかって、作者の眼差しはどこまでもやさしい。

 

四六判上製カバー装 2520円•税込