小潟水脈歌集『扉と鏡』

たばこ一本ただただカラカラ回りをりエスカレーターここでおしまひ

証明写真と同じわが顔嵌まりたり帰り来て入る部屋の鏡に

子は親の背を見て育つと言はるるが嘘つけ本の背表紙ばかり

雪だるま石の目くぼませ融けながら困つたやうに夕闇に座す

色かたち覚えることなく朝晩にこの位置にある歯ブラシを取る

 

日常の営みの中で心にとまったモノや事柄を記録する。

しかし、日常をそのまま日常としてすませることはしない。

その記録のかたちが歌という小詩型を選んだ瞬間、

心の時空は日常を越えて自在に飛翔し始める!

 

四六判上製カバー装 2625円•税込