滝澤齊歌集『屏風絵のなき屏風歌 木愛づる歌ども』

桜みち薄紅色の風吹けば道ゆき人もなべて匂へり

雪降れば松を尋ねむ 白妙に身をけすらひて吾を待つらむ

月明し 淡雪かかる白梅に 銀の屏風となりて野は映ゆ

炎天に焼かるるものを プラタナス 木陰をくるる君がやさしさ

青葉なる桜の下にやすらへば 汗もさまりぬ いざ歩み出てむ

紅葉葉を敷き詰むる道の色深き 時雨ふりけむ夕べの園は

 

歌作りを純粋に楽しむ。『古今集』の世界に遊び、

古歌の宇宙に紛れ込みながら、

やわらかで、匂いたつ美を求めてやまない。

 

繊細な抒情が奏でる歌世界のはじまりだ。

 

四六判並製 1500円•税込