いとう茜歌集『イエローカード』

うすあかき果肉のような月のぼり一本の矢をわれは欲るなり

夢なれどひとを殺めて逃れ来し 群肝を刺す寒の村雨

ふかぶかと吸いこまれゆく雲雀かな空にもあれよ引力の罠

無名にて死にゆくわれか夜もすがら地を穿ちいる直情の雨

 

人間の業と宿命の交叉する日々。ひとくれの土でさえも祖先と呼ぶことをためらわぬ作者の感性は、生きとし生けるものへの挽歌と祈りに満ちている。晋樹隆彦

 

四六版上製カバー装 2625円•税込