齊藤左知子歌集『帰雲』

いもうとを忘れてしまつた兄の空むかしの青いあさがほのあを

標高差四百メートル上下して風に冷えたる竜胆を見き

散る花と明日はひらかむふくらみと白骨のいろのつづく梅林

昼ふかく肉厚となる日のひかり世長人はうとうととせり

 

猫好きで有名な著者である。

猫以外でも小さな虫から獣たちまで、たくさんの動物たちが登場する。

見どころは、動物たちを素材にした何気ない叙景歌のような歌でも、

読者にふと人生を思わせるような歌が多い点である。——-佐佐木幸綱•序より

 

四六版上製カバー装 2625円•税込