紺谷志一歌集『妻の文箱』

わが娘とは惚けてわからぬ妻の掌に新任の名刺を握らせている

妻の死が真近と予告されたけど介護用ゴム手袋三箱買ひ足す

亡き妻の紅の文箱にしまひあり義兄の名が載る戦死公報

 

北原白秋の「多磨」から出発した著者は、戦前戦後の長きにわたって一貫して白秋の系譜を歩み続けてきた。戦争詠、そして最愛の妻に寄せる作品には情感がこめられ、人間愛にあふれる。(林田恒浩帯文より)

46版上製カバー装 2520円•税込