今川美幸『雁渡りゆき』

これの世に抱かるるための髪を梳くたちまち髪さへ咆哮すらむ 

みづからは輝くはなし裸身こそ盛装なればすずやかに佇つ

わが裡にひとひらの(こう)あらざれば恋あらざれば生きざらめやも

耳はもつともあとに死すとぞ この夜更け死にきれぬ耳あまた浮游す

訣れいくつ重ねきし身をあらあらとひき寄せて詠む うたは恋歌    

火の酒を口移されぬ たましひの冥き韻きを雁渡りゆき

 

かなしみをこそ詠え。多くの死者たちとの和解のために。

うたは恋歌がいい。雪の夜に沈み、青空に抜けていくしらべとともに。

やわからな言葉と思念の深さとで幻視する世界が闇の向こうで輝き始める。

 

四六版上製カバー装 2300円・税別

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コメント: 1
  • #1

    jasmin (木曜日, 27 4月 2017 21:25)

    今川美幸さんは優れた歌人だと思いますが、ご年齢の割に性愛の歌が多いのには少しとまどいます。
    知的な方ですから、もっと広い視野に立った社会詠などもお読みになれると思います。そうした短歌を読んでみたいです。