渡邊千紗子歌集『野の花』

庭土をわたしの裡を木々の葉をまづかに濡らせり初あきの雨
かすかなる音にふり向けば地に転ぶ椿の紅の未だ鮮し
ご詠歌を唄ふ鈴の音も揃はせて心ひとつになりしひと時
かくのごと終はありたし真白なる沙羅の花落つ清らなるまま
子に孫に継がれゆくらむこの寺も花咲く木々も吾らの思ひも
 
花鳥風月、山河草木すべてが、渡邊さんの自然と一体化していて順直な作品となっている。
より美しく洗練された品格と相俟って、風に光に、山に、その瑞々しさは雅びやかといってもよいだろう。

 

勝山一美(序文より)

四六判上製カバー装 2500円•税別