井村亘歌集『星は和みて』

顔のなき白衣の群れに囲まれて無影灯下の執刀はじまる

井の底ひひかり溜めをりおとうとの駈けてまろびし杳き日のまま

春の野のほのかに紅きほとけのざ摘みて帰らな子の坐りゐむ

底紅の宗旦木槿はや咲けばひと日ひと日を虔しみて生きむ

 

『星は和みて』は著者の住む大和の河合町星和台に基づく。

この地で詠んだなかでとりわけ生老病死に伴う歌に感動を覚える。

畢竟、短歌は晩歌と相聞歌につきるかも知れない。

-前川佐重郎「序」より-

 

A5判上製カバー装 2800円•税込