大野とくよ歌集『永遠とう』

生きて再び誰にか逢わんほんのりと夕闇匂う木蓮の花

さまよえるここと一途に何を欲す天上界に咲く桃の花

夏の日にゆらり輝く芙蓉の花うす紅にこころ盗られておりぬ

あと幾年生きなんとする空のなか笑顔に向きて口ごもりたり

真実なるこころのひだをときあかす歌ノート風が剥がしてゆきぬ

 

生へのかぎりない慈しみ。

桃の歌人の心はおおらかに、静かに成熟を続けている。

みずみずしい言葉の果実をもぎ取る器となって。

 

「大自然の畏怖より逃れ難い現実、それを心に病めるからこそ、

その大自然界に向って生きる叫びを、私は自らの短歌に

なしとげたいと思ったのである。」(あとがきより)

 

A5判上製カバー装 3000円•税込