ながらみ書房は1985年開業、二千点以上の歌集歌書を出版してきた出版社です

 


News

好評「短歌往来」バックナンバー

 
  1. 石川信雄歌集『cinema』復刻しました!
  2. 島内美代歌集『風の十字路』日本歌人クラブ北関東ブロック優良歌集に選ばれました!
  3. 第21回ながらみ書房出版賞山口明子歌集『さくらあやふく』に決定しました!
  4. 伊志嶺節子歌集『ルルドの光』第17回平良好児賞に選ばれました!
  5. 長嶺元久歌集『カルテ棚』第10回筑紫歌壇賞に決定しました!
  6. 足立晶子歌集『ひよんの実』平成25年度日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集に決定しました!
  7. 冨尾捷二歌集『満州残影』平成25年度日本歌人クラブ東京ブロック優良歌集に選ばれました!
  8. 橋本忠歌集『白き嶺』平成25年度日本歌人クラブ北陸ブロック優良歌集に選ばれました!
  9. 長嶋浩子歌集『遊水池』が埼玉県歌人会新人賞に選ばれました!
 



書籍のご注文や在庫確認は以下にて承っております。

手数料弊社負担の郵便払込票を同封して本を送らせていただきます。

mail:nagarami@jasmine.ocn.ne.jp
tel:03-3234-2926
fax:03-3234-3227

編集部日記

高崎淳子歌集『難波津』

ゲーテ登り茂吉も登りまだらゆきリギの裏山眺めて過ぎる

生は死をそそりムリーニ渓谷にレモン輝き海は誘ふも

国語教師三十六年に魯迅ありヘッセもありて友のごとしも

夏木原松陰の詩にまむかへばさつきつつじがほのかに残る

難波津に百舌鳥の耳原尋ねたり松は緑のときはなる花

 

教師生活を終えた横浜への惜別。

文豪、画工に出会う海外への旅。

研ぎ澄まされた知性と感性の閃き。

 

咲くやこの花――

そう口ずさみつつ人を、歴史を、

風景を、そして世界を凝視する。

 

四六版上製カバー装 二五〇〇円・税別

0 コメント

小寺豊子歌集『水鳥のごとく』

 

 

水鳥のごとくアイロンすべらせてシーツの小さき波を消したり

 

〈「シーツにアイロンをかける場面と水鳥が水面をすべる光景の連想が見事。比喩が大らかで、のびのびしていて、読者を楽しい気分にみちびいてくれる」。幸綱氏が小寺作品の特質をとらえて高く評価したこの一首から歌集タイトルは採られた。〉   伊藤一彦・跋より

 

 

さくら背に母と並びて写真撮る石段ひとつ高さ違えて

掠れゆくこともしないで突然の別れのごとくインクが切るる

五枚目に漸く呼吸(いき)の合いてきて夫と二十枚(にじゅう)の障子張り替う

もう少し雨と呼ばれていたいから川面の水に溶けないわたし

 

五秒後に落としてしまう西瓜抱き写真のなかで微笑む少女

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

0 コメント

短歌往来2016年9月号

◉巻頭作品21首

手術室/谷岡亜紀

 

◉特別作品33首

夏の家族/黒瀬珂瀾

梅雨の日々と式/ 小川佳世子

 

 

一ページエッセイ

落書帖ー茂吉の歌/大島史洋

酔風船ー結社は変貌する/千々和久幸

花和尚独語ー方代忌と芙蓉/大下一真

 

[特集]命とことば

宇宙意識への拡がり/小黒世茂

作品と人生のせめぎ合い/吉川宏志

生を描くことば/池田はるみ

いまを生きる声と言葉/十鳥敏夫

新しいいのちの認識と感覚/米川千嘉子

人間のあたたかい息/本田一弘

固有のいのち、固有のことば/桑原正紀

 

 ◉作品七首

夏日小詠/吉村睦人

渓/松永智子

光陰/古屋正作

硝子のうちら/永田典子

秋季短詠/八城水明

新聞ひらく/桜井登世子

臀力/松川洋子

稲妻/伊勢方信

路銀/尾崎まゆみ

水の尾/秋山佐和子

匕首ひとつ/柴田典昭

 

◉作品十三首

余力余命/大熊俊夫 

三月三十日、花巻市街周遊/江田浩司

ピカソの鳩/岩尾淳子 

小高賢の手紙/冨樫榮太郎

器と雨/棚木恒寿

牛蛙のこゑ/山本登志枝

母の質問/高山邦男

年年歳歳/山内嘉江

 

◉作品八首

妻の七回忌/須永秀生

うすずみ/新井瑠美

梅雨の後前/伊藤宏見

六月の丈/小林暁子

くだり坂/平尾眞

掌の卵/小宮山玉江

酒の銘柄/大友道夫

初秋の風に/大芝貫

出原の柱松/阿部尚子

洛陽悠游/今枝敬昌

昭和二十年夏ー在北京ー/笹倉玲子

 

■歌人回想録ー石本隆一

小歴/山本雪子編

石本隆一のうた50首抄/松田愼也選

音感の美しさと愛誦性/武田弘之

 

■連載ー百人一首の歌人たち

「わが身ひとつ」という句/久保田淳

■連載ー浪々残夢録 感傷的回顧/持田鋼一郎

■連載ー時言・茫漠山日誌より 永さん逝く/福島泰樹

■連載 メロディアの笛Ⅱ 白秋の昭和/渡英子

■連載ー短歌の近代 「もののあはれ」と革命……石川啄木/島内景二 

■連載ー編集者の短歌史 「心の花」一千号の準備/及川隆彦

◉今月の新人 軌道の幅/青山仁

■今月の視点 政治の本質を見抜く/井上美地

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

■カルチャーのうた 兵庫勤労市民センター「短歌探求」講座/小林幹也

 

■新刊歌集歌書評

吉村睦人歌集「鉄鉛集」/水野昌雄

米田律子歌集「木のあれば」/香川ヒサ

十鳥敏夫著「古歌の光芒」/今野寿美

山中律雄歌集「仮象」/外塚喬

今川美幸歌集「雁渡りゆき」/江畑實

廣庭由利子歌集「ぬるく匂へる」/藤原龍一郎

おの・こまち歌集「ラビッツ・ムーン」/村島典子

石川浩子歌集「坂の彩」/大辻隆弘

森垣岳歌集「遺伝子の舟」/米田靖子

永谷理一郎歌集「忘れ物を取りに帰ろう」/藤島秀憲

金子愛子歌集「花の記憶」/綾部光芳

 

■作品月評ー七月号より/沢口芙美

■評論月評/田中教子

■全国〝往来〟情報

 

■編集後記

 

0 コメント

小紋潤歌集『蜜の大地』

人生の半ばを過ぎてぬばたまのカーマイケルを思ふことあり

われに母在ると思へば夏雲はこの大空に昼をゆたけし

銀河系、その(はじ)まりを思ふときわが十代の孤り(すず)しも

憂ひありて思へばわれに父ありて夕べの祈り捧げゐるらん

顧みてねがふことなきわれになほ盧生の夢のごとき残生

クレヨンに描かれてゆく麒麟なりさうだ象よりずつと喬いぞ

夢ひらく水木の花に沿ひてゆくお前のゐない動物園で

 

ふるさとに帰りて思ふ徴税人マタイが従ひしその人のこと

 

 待望の小紋潤の歌集がついに刊行された。短歌はついに人間なのだ、古くから言われてきたこの言葉がこれほど似合う歌集はめったにない。どの一首をとりあげても、小紋潤の声が聞こえる。小紋潤の息づかいが感じられる。そこに小紋潤その人がいる。

佐佐木幸綱

 

 

0 コメント

那須愛子歌集『希求はるか』

海は母 地球に生命育みつつ四十億年すべて許し来

一生われを守ると君が約束のふいに聞こえてあとは海鳴り

まだ暗き街へ仕事に行く吾娘へマヤ人も飲みしココアを沸かす

震へながらマイクを握る戦争を厭ひし母の影に押されて

人間は水と恋とで出来てゐるはるか原初の平和希求す

 

 

繰り返し詠われる青の歌、海の歌から、人間の根源に立ち返って思索をしながら生きている那須さんの生き方、歌への姿勢を感じました。         木村雅子・序より

0 コメント

赤松佳惠子歌集『いとほしき命』

 

幸せにあるやと受話器の兄の声すなはち父母の心と思ふ

この家を仕切れるわれが猫並みに「おい」と呼ばれてゐる不文律

猫二匹人間二人のこころ四つどれかが常にはみ出し加減

ショッピングカート以外に頼るものは無し外出のたび涙にくるる

体調不安・遠出不安に縛られてほんにわたしはあかんたれなる

 

飾ることがなく伸びやか、真摯な詠風のなかに人生のほろ苦さも感じられて、赤松さんのヒューマンな声をどの作品からも聞くことができる。

 

林田恒浩・跋より

0 コメント

鳥山順子歌集『クロスロード』

「クロスロードみつぎ」起点の遊歩道あるけ歩けと私も歩く

 

みずからの住んでいる土地への深い愛情はよい作品を生み出す。土地の神も応援してくれるからに違いない。広島県の尾道市に住む鳥山順子さんは並々ならぬ愛情を街と自然に対して抱いている。それは本書のどのページを開いても明らかだ。「クロスロードみつぎ」とは町のバス停らしいが、一見ふしぎで何と魅力的な名前だろう。私たちを「クロス」する世界に誘ってくれる楽しい一冊である。                  伊藤一彦

 

愛といふ複雑 庭の冬薔薇のくれなゐの口ほそく()くのみ

並びゐて手をつなぐなき内裏雛こころ濃くなりゆく日におもふ

わが持てるものと気づかず寄りゆけりカーブミラーのなかのひとつ灯

()れし畦道低く咲き初めてなづなよなづな真つ(さら)の白

水雪の融けながら降り現世(うつしよ)と彼の世の境に文旦供ふ

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

0 コメント

福原美江歌集『夕雨の盆』

 

 

久びさに歩き詣でる人麻呂神社父をおくりしのちの初春

白緑のいただき見する高千穂峰(たかちほ)の鳥すむ森のふところに入る

新入生迎へむ机にひらがなの名札貼りをりまつすぐまつすぐ

鹿野遊(かなすび)(いし)河内(かはち)小も閉校す()しき名前の消えゆく平成

濃き淡きあまたの地層かさね来し老いの人生(ひとよ)をうたに教はる

ひともとの極楽鳥花ふるへをり夜半のテレビの銃のひびきに

六十句選び遺句集『花菖蒲』編みて供ふる(ゆふ)(さめ)の盆

 

 

福原美江さんは歴史豊かで思い出深い故郷の石見にしばしば帰っている。抑制のきいた清々しい文体の故郷の歌が『夕雨の盆』のまず印象である。そして、前歌集『雁皮紙』に続く十年間の彼女の宮崎での生活がいかに充実し多忙であったかを証す一冊でもある。大学教授を辞したあとのボランティア活動、最愛の家族の看取り。『夕雨の盆』という優しく寂しいような書名に著者の祈りがある。

伊藤一彦

0 コメント

田土才惠歌集『風のことづて』

なにがなし時計いくつもならべいていずこにあらんわれのみの時

湯たんぽに湯の音とぷとぷ階上る今日の終わりの足音立てて

もの書けばたちまちペンを貸せといい意志見せはじむ一歳の春

ケアハウスの窓ひそやかに開けられて春愁ひとつ今とき放つ

風となり水とはなりてめぐりつついのちのほむら若葉縫いゆく

 

人から人へ、親から子へ、孫へ

風がささやきかけるように

伝えたい思いがある、伝えたい歌がある。

 

 

そっと耳をすませば

言葉はいのちあふれる湧井のようだ。

0 コメント

短歌往来2016年8月号

◉巻頭作品21首

 晩年の美観/岡井隆

 

◉特別作品33首

 飛鳥/坂井修一

 歳月をまわす力/ 冬道麻子

 

一ページエッセイ

 落書帖ー近藤芳美の歌/大島史洋

 酔風船ー窮鼠5分を噛む/千々和久幸

 花和尚独語ー白き桔梗に/大下一真

 

[特集]オリンピックの思い出 スポーツの歌

 鬣犬「樺」の死/岡野弘彦

 さらば東京オリンピック/水原紫苑

 1964年の青春/三枝昻之

 十歳の誕生日/栗木京子

 あの時のメダル/永田和宏

 聴かな神の声/平山良明

 はざまの橋/松平盟子

 漆黒の夜闇のなかに/林田恒浩

 東洋の魔女/今井恵子

 バロン西と乗馬ウラヌス/岡崎洋次郎

 オリンピア2016 1936/加古陽

 山中毅/中村規子

 美しき悲壮感/石川幸雄

 

◉作品七首

 こどもの声/橋本喜典

 塔の窓/結城文

 無音に生きる/藤岡武雄

 リンゴの樹/深井美奈子

 南原繁歌碑を訪ふ/水落博

 六月/花山多佳子

 山女魚/結城千賀子

 笛吹きケトル/金子貞雄

 犬駆けて来る/長澤ちづ

 その人は/王紅花

 

◉作品十三首

 成田空港第一ターミナル/山本雪子

 変身/冨尾捷二

 動植綵絵(若冲展)/秋山周子

 銀行/桜井健司 

 路傍の花束/浜谷久子

 東北行/田中徹尾

 光のいたずら/佐藤晶

 

◉作品八首

 恐竜博にて/安宅夏夫

 観天望気/小見山泉

 人の心/梅本武義

 牧水の盃/倉沢寿子

 灯して眠る/長嶺元久

 雉鳩の棲む街/久保とし子

 麦秋の道/小原文子

 のこる/楜澤丈二 

 余生を生きる/水谷和枝

 百年/清水亞彦

 昭和の音/鈴木りえ

 

■歌人回想録ー橋田東聲

 小歴/佐田公子編

 橋田東聲のうた50首抄/佐田毅選

 穏やかな自然観照そして寂寥/佐田公子

 

■連載ー百人一首の歌人たち 多才な女歌よみの恋/久保田淳

 

■連載ー浪々残夢録 鷗外にとって詩歌とは何だったのか/持田鋼一郎

 

■連載ー時言・茫漠山日誌より 大正行進曲/福島泰樹 ー114

 

■連載 メロディアの笛Ⅱ 白秋の昭和/渡英子

 

■連載ー短歌の近代白秋『桐の花』と「もののつれづれ」/島内景二

 

■連載ー編集者の短歌史 宮崎・熊本への旅/及川隆彦

 

◉今月の新人ー作品5首 花が増えた日/正田彩乃

 

■今月の視点 歌会の魅力/和田沙都子

 

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

■カルチャーのうた NHK文化センター横浜ランドマーク教室/三井修ー

 

■新刊歌集歌書評

 『石本隆一全歌集』/藤原龍一郎

 三枝昻之歌集「それぞれの桜」/楠田立身

 大口玲子著「神のパズル」/梶原さい子

 橋本喜典著「続短歌憧憬」/横山岩男

 櫟原聰歌集「華厳集」/柳宣宏

 高山邦男歌集「インソムニア」/和嶋勝利

 加古陽治著「一首のものがたり」/島田修三

 山内嘉江歌集「ガラスのはこ」/阪森郁代

 経塚朋子歌集「カミツレを摘め」/今野寿美

 山谷英雄歌集「寒流」/鶴岡美代子

 鈴木香代子歌集「青衣の山神」/米川千嘉子

 

■作品月評ー六月号より/沢口芙美

■評論月評/田中教子

■全国〝往来〟情報

■編集後記

表紙画/高橋千尋

 

本文カット/浅川洋

0 コメント

玉井綾子歌集『発酵』

ビニールの中の塩麹 発酵を促してもむもまれる母性

「地図読めぬ女性」の一人であるわれの方向音痴は父親譲り

エレベーター降りて歩める方向は確かなり母と二人の旅は

四十三年間眠れるDNAわれにもつけよそれからの筋

わが爪と同じく丸い吾子の爪明らかに茂樹の孫たる証 

出社してはずすショールにいつの間につぶれて乾いたごはん数粒

重そうに何度も揺する抱っこひも子を持つ母が示しいる旗

泣きわめく声にかぶせる大声は金切り声と戦争を生む 

 

 

 発酵をうながして塩麹を揉むように、母性もまた揉まれることで発酵していく――そのように捉える知性。変化や成長と言わずに、発酵と言うところにも、この人の柔軟性と賢明さがうかがえる。                      久我田鶴子・跋より

0 コメント

短歌往来2016年7月号

◉巻頭作品21首

 残春雑記/尾崎左永子

 

◉特別作品33首

 火襷と利久梅/小林幸子

 いのちの樹/ 一ノ関忠人

 

一ページエッセイ

 落書帖ー茂吉の歌など/大島史洋

 酔風船ー先生という罪/千々和久幸

 花和尚独語ー秘めたる奥ゆかしさ/大下一真

 

[特集] 『土と人と星』&『思川の岸辺』

 

 『土と人と星』 31首抄/ 小池光 選

 肯定的抒情/ 小池光

 

 『思川の岸辺』 31首抄/伊藤一彦

 小池マゼラン/伊藤一彦

 

 銀河と自転車/栗木京子

 〈われ〉の現在/奥田亡羊

  原像と模像のドラマを読む/日高堯子

  伊藤と小池の「読み」から考える/染野太朗

  厳しい現実を受け止める姿勢/小林幹也

 

◉作品七首

 振り返る/前川佐重郎

 前線/森山晴美

 ほととぎす啼く/大滝貞一

 四月憂鬱/松坂弘

 五月の海風/木村雅子

  『家庭の医学』/浜田康敬

 ひと年過ぎて/大朝暁子

 時を積む/梅内美華子

 トンボ/沖ななも

 境界線/河野小百合

 花の歌/大崎瀬都

 

◉作品十三首

 特急あずさ/中地俊夫

 うみ/佐藤よしみ

 狂科学/江畑實

 カルダモンいろ/三枝むつみ

 残月/森本平

 つくば/梶原さい子

 心の帆/山口明子

 八重桜/上條雅通

 土/吉野節子

 手を振る少女/岩井幸代

 垂直に重なる人生/櫛田如堂

 パンにジャム/小林さやか

 

◉作品八首

 湧き水/石田照子

 花咲かぬ春/島内美代

 異人館街宵闇/藤井幸子

 青田を渡る/伊田登美子

 意味なき存在/綾部剛

 水素スタンド/反田たか子

 角宮悦子さん/原昌子

 をさなき緑/兼平一子

 雲に乗る/服部貞行

 老眼鏡/岡本智子

 せん妄/片岡なおこ

 

 三月うさぎ/宮野克行

 

■連載ー百人一首の歌人たち

 憂かりける人を初瀬の/久保田淳 

 

■カルチャーのうた

 姫路KCC短歌教室/小畑庸子

 

■追悼ー角宮悦子

 あたたかい心のふれ合い/木原美子

 

■連載ー浪々残夢録

 貧しさの中の真・善・美ー良寛と現代/持田鋼一郎

 

■連載ー時言・茫漠山日誌より

 懐かしのコロンビア!/福島泰樹

 

■連載 メロディアの笛Ⅱ 白秋の昭和/渡英子

 

■連載ー短歌の近代 原阿佐緒の『涙痕』を読む/島内景二

 

■連載ー編集者の短歌史 七〇年代半ばの動向/及川隆彦

 

◉今月の新人ー作品5首 かなしみ、一滴/大石真由香

 

■今月の視点 情報を食う/宮原勉

 

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

■新刊歌集歌書評

 松永智子歌集「川の音」/古谷智子

 渡辺松男歌集「雨る」/柳宣宏

 「モンキートレインに乗って 」/内藤明

 山本登志枝歌集「水の音する」/滝下恵子

 山田航歌集「水の羊」/岩内敏行

 田中徹尾歌集「芒種の地」/江戸/雪

 梅本武義歌集「仮眠室の鳩」/藤島秀憲

 小宮山玉江歌集「葡萄棚の下で」/秋山周子

 

 浜谷久子歌集「風笛」/五十嵐順子

 

■作品月評ー五月号より/沢口芙美

■評論月評/田中教子

■全国〝往来〟情報

■編集後記

 

表紙画/高橋千尋

 

本文カット/浅川 洋

0 コメント

逸見悦子『野あざみ』

 

 

荷を送り発ちし子の部屋広々と三月のカレンダー風にゆれおり

 

すべてキャド駆使する職場になりし今われと製図台細々残る

 

花蜘蛛のいつしか傘の内側に止まりて共に参道下る

 

菜の花の黄色封じて送りくれし母よ彼の日よ今に抱きしむ

 

リズム良き足音駆けゆく窓の下あれは五分刈り青年の音

 

 

明け番の夫の挿したる野あざみの位置整える夜の食卓

 

 

逸見さんは平成三年に「歌と観照」に入会し、平成七年に新人賞にあたる、「歌と観照社賞」を受賞した。「野あざみ」は、おそらく作者の好きな花。山野にも郊外にも見られるが、紫の花の色はさえざえとして、野の花の強い生命力を感じさせる。

五十嵐順子・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

0 コメント

南條暁美『往き帰る』

坂道の角を曲がれば弟の生れし家なり馬酔木が匂ふ

ページ繰る記憶残して返り来ず亡き弟に貸したる詩集

六歳のわが目に被爆の天主堂煉瓦の浮遊してゆくごとし

梯子のびて若き男が赤き玉を拭きはじめたり風の交差点

好きな場所選んで人は皆ゴビに葬られるとふ広大な墓所

終電の遠く過ぎゆく音のして生きる日々とは往き帰ること

 

「旅が私の人生そのもの」と南條さんはいう。その旅とは、自らの来歴をたどる旅であり、歴史を遡る旅である。さらには人間の生死が見えわたるような場所への旅であろう。                 

 

小林幸子・解説より

 四六版上製カバー装 2500円・税別

0 コメント

安藤直彦『佐夜の鄙歌』

 

夏さればきよら流れの滑石(なめいし)にわれは鮎釣るその床石に

かたくり山に雪は明るく降りながらわれは来たりぬ咲くとなけれど

竜胆は平に添へてあるものを挿しのべてほそく鮎ほぐす指

ひさかたの光に音のあるごとく石をうちつぐ雪解のしづく

人の死をかなしびきたるわが(なづき)をひとゆすりせり朝の地震(なゐ)    

 

鄙に在っては、山川草木、鳥虫魚たちとの交感にあそび、

時として、産霊の神々に言問いながら、

伝統詩型の流麗な調べに、個と普遍の歌世界を喚び込んでやまない。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

0 コメント

恒成美代子『秋光記』

せくぐまりおぼつかなくも生きてゐる母とパンジー風にふるへて

そのやうにしか生きられぬ秋の虫 鳴くだけ鳴いて静かになつた

むつのはな耀ひ母を車椅子に乗せて詣づるうぶすな神に

背伸びして秋の光に手を伸ばすけふのわたしを(ねぎら)ふやうに

 大三角見しことメールに発信し、しんじつ遠し息子はとほい

 

悲しむために生まれたのではない。

目に映る風景はいつもやさしい。

筑紫博多、筑後八女、そこに暮らす人々。

透明な秋の光の中、すべてが穏やかにそよぐ。

 

 四六版上製カバー装 2500円・税別

0 コメント

おの・こまち『ラビッツ・ムーン』

 

水のようなドレスが着たい月の夜 光目指して烏賊昇ります

 

手合わせて水汲み運ぶおさな子の砂の穴いつ満ちるのだろう

 

卵割る指の加減を知らなくて殻は孵らぬいのちと交じる

 

脚本に「ああ」と書くのは楽しくて「ああ」という声一人一人の

 

空見上げ飛びたいウサギの耳は羽ソソラソラソラ月にかえろう

 

あをによし奈良の都の万緑に劇団ひとつ立ち上ぐる君 前登志夫 

 

月のウサギよ跳ねてごらん。

暮らしの隙間のメルヘンを物語るように、

定型という小さな楽器が演じ始める。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

2 コメント

三井修『汽水域』

 

 

 

 

 

バーボンの水割りふふめば北溟を一人ボートに()く心地する

 

屋上に見下ろす地には試歩の人それに付き添う人のしずけし

 

抒情詩(リリック)叙事詩(エピック)鋭く交差するアラビアなりしか 若く旅しき

 

一瞬といえども我はしかと見つ翔びゆく蜂の垂れいる肢を

 

 

浅き瀬を腹擦りながら上りゆく魚らは今日を婚姻の色

 

 

 

やわらかな言葉、おだやかなしらべ。

 

社会や生活の現実を真摯に見つめ、身めぐりの自然に心寄せながら、

 

この定型の過剰を削ぎつつ詠う。

 

いまだ見ぬ美の高みへ、そしてたましいの深みへと向かう孤高の翼!

 

  

A5版上製カバー装 2800円・税別

1 コメント

今川美幸『雁渡りゆき』

これの世に抱かるるための髪を梳くたちまち髪さへ咆哮すらむ 

みづからは輝くはなし裸身こそ盛装なればすずやかに佇つ

わが裡にひとひらの(こう)あらざれば恋あらざれば生きざらめやも

耳はもつともあとに死すとぞ この夜更け死にきれぬ耳あまた浮游す

訣れいくつ重ねきし身をあらあらとひき寄せて詠む うたは恋歌    

火の酒を口移されぬ たましひの冥き韻きを雁渡りゆき

 

かなしみをこそ詠え。多くの死者たちとの和解のために。

うたは恋歌がいい。雪の夜に沈み、青空に抜けていくしらべとともに。

やわからな言葉と思念の深さとで幻視する世界が闇の向こうで輝き始める。

 

四六版上製カバー装 2300円・税別

0 コメント