ながらみ書房は1985年開業、二千点以上の歌集歌書を出版してきた出版社です

 


News

好評「短歌往来」バックナンバー

 
  1. 石川信雄歌集『cinema』復刻しました!
  2. 島内美代歌集『風の十字路』日本歌人クラブ北関東ブロック優良歌集に選ばれました!
  3. 第21回ながらみ書房出版賞山口明子歌集『さくらあやふく』に決定しました!
  4. 伊志嶺節子歌集『ルルドの光』第17回平良好児賞に選ばれました!
  5. 長嶺元久歌集『カルテ棚』第10回筑紫歌壇賞に決定しました!
  6. 足立晶子歌集『ひよんの実』平成25年度日本歌人クラブ近畿ブロック優良歌集に決定しました!
  7. 冨尾捷二歌集『満州残影』平成25年度日本歌人クラブ東京ブロック優良歌集に選ばれました!
  8. 橋本忠歌集『白き嶺』平成25年度日本歌人クラブ北陸ブロック優良歌集に選ばれました!
  9. 長嶋浩子歌集『遊水池』が埼玉県歌人会新人賞に選ばれました!
 



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編集部日記

短歌往来2016年8月号

◉巻頭作品21首

 晩年の美観/岡井隆

 

◉特別作品33首

 飛鳥/坂井修一

 歳月をまわす力/ 冬道麻子

 

一ページエッセイ

 落書帖ー近藤芳美の歌/大島史洋

 酔風船ー窮鼠5分を噛む/千々和久幸

 花和尚独語ー白き桔梗に/大下一真

 

[特集]オリンピックの思い出 スポーツの歌

 鬣犬「樺」の死/岡野弘彦

 さらば東京オリンピック/水原紫苑

 1964年の青春/三枝昻之

 十歳の誕生日/栗木京子

 あの時のメダル/永田和宏

 聴かな神の声/平山良明

 はざまの橋/松平盟子

 漆黒の夜闇のなかに/林田恒浩

 東洋の魔女/今井恵子

 バロン西と乗馬ウラヌス/岡崎洋次郎

 オリンピア2016 1936/加古陽

 山中毅/中村規子

 美しき悲壮感/石川幸雄

 

◉作品七首

 こどもの声/橋本喜典

 塔の窓/結城文

 無音に生きる/藤岡武雄

 リンゴの樹/深井美奈子

 南原繁歌碑を訪ふ/水落博

 六月/花山多佳子

 山女魚/結城千賀子

 笛吹きケトル/金子貞雄

 犬駆けて来る/長澤ちづ

 その人は/王紅花

 

◉作品十三首

 成田空港第一ターミナル/山本雪子

 変身/冨尾捷二

 動植綵絵(若冲展)/秋山周子

 銀行/桜井健司 

 路傍の花束/浜谷久子

 東北行/田中徹尾

 光のいたずら/佐藤晶

 

◉作品八首

 恐竜博にて/安宅夏夫

 観天望気/小見山泉

 人の心/梅本武義

 牧水の盃/倉沢寿子

 灯して眠る/長嶺元久

 雉鳩の棲む街/久保とし子

 麦秋の道/小原文子

 のこる/楜澤丈二 

 余生を生きる/水谷和枝

 百年/清水亞彦

 昭和の音/鈴木りえ

 

■歌人回想録ー橋田東聲

 小歴/佐田公子編

 橋田東聲のうた50首抄/佐田毅選

 穏やかな自然観照そして寂寥/佐田公子

 

■連載ー百人一首の歌人たち 多才な女歌よみの恋/久保田淳

 

■連載ー浪々残夢録 鷗外にとって詩歌とは何だったのか/持田鋼一郎

 

■連載ー時言・茫漠山日誌より 大正行進曲/福島泰樹 ー114

 

■連載 メロディアの笛Ⅱ 白秋の昭和/渡英子

 

■連載ー短歌の近代白秋『桐の花』と「もののつれづれ」/島内景二

 

■連載ー編集者の短歌史 宮崎・熊本への旅/及川隆彦

 

◉今月の新人ー作品5首 花が増えた日/正田彩乃

 

■今月の視点 歌会の魅力/和田沙都子

 

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

■カルチャーのうた NHK文化センター横浜ランドマーク教室/三井修ー

 

■新刊歌集歌書評

 『石本隆一全歌集』/藤原龍一郎

 三枝昻之歌集「それぞれの桜」/楠田立身

 大口玲子著「神のパズル」/梶原さい子

 橋本喜典著「続短歌憧憬」/横山岩男

 櫟原聰歌集「華厳集」/柳宣宏

 高山邦男歌集「インソムニア」/和嶋勝利

 加古陽治著「一首のものがたり」/島田修三

 山内嘉江歌集「ガラスのはこ」/阪森郁代

 経塚朋子歌集「カミツレを摘め」/今野寿美

 山谷英雄歌集「寒流」/鶴岡美代子

 鈴木香代子歌集「青衣の山神」/米川千嘉子

 

■作品月評ー六月号より/沢口芙美

■評論月評/田中教子

■全国〝往来〟情報

■編集後記

表紙画/高橋千尋

 

本文カット/浅川洋

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短歌往来2016年7月号

◉巻頭作品21首

 残春雑記/尾崎左永子

 

◉特別作品33首

 火襷と利久梅/小林幸子

 いのちの樹/ 一ノ関忠人

 

一ページエッセイ

 落書帖ー茂吉の歌など/大島史洋

 酔風船ー先生という罪/千々和久幸

 花和尚独語ー秘めたる奥ゆかしさ/大下一真

 

[特集] 『土と人と星』&『思川の岸辺』

 

 『土と人と星』 31首抄/ 小池光 選

 肯定的抒情/ 小池光

 

 『思川の岸辺』 31首抄/伊藤一彦

 小池マゼラン/伊藤一彦

 

 銀河と自転車/栗木京子

 〈われ〉の現在/奥田亡羊

  原像と模像のドラマを読む/日高堯子

  伊藤と小池の「読み」から考える/染野太朗

  厳しい現実を受け止める姿勢/小林幹也

 

◉作品七首

 振り返る/前川佐重郎

 前線/森山晴美

 ほととぎす啼く/大滝貞一

 四月憂鬱/松坂弘

 五月の海風/木村雅子

  『家庭の医学』/浜田康敬

 ひと年過ぎて/大朝暁子

 時を積む/梅内美華子

 トンボ/沖ななも

 境界線/河野小百合

 花の歌/大崎瀬都

 

◉作品十三首

 特急あずさ/中地俊夫

 うみ/佐藤よしみ

 狂科学/江畑實

 カルダモンいろ/三枝むつみ

 残月/森本平

 つくば/梶原さい子

 心の帆/山口明子

 八重桜/上條雅通

 土/吉野節子

 手を振る少女/岩井幸代

 垂直に重なる人生/櫛田如堂

 パンにジャム/小林さやか

 

◉作品八首

 湧き水/石田照子

 花咲かぬ春/島内美代

 異人館街宵闇/藤井幸子

 青田を渡る/伊田登美子

 意味なき存在/綾部剛

 水素スタンド/反田たか子

 角宮悦子さん/原昌子

 をさなき緑/兼平一子

 雲に乗る/服部貞行

 老眼鏡/岡本智子

 せん妄/片岡なおこ

 

 三月うさぎ/宮野克行

 

■連載ー百人一首の歌人たち

 憂かりける人を初瀬の/久保田淳 

 

■カルチャーのうた

 姫路KCC短歌教室/小畑庸子

 

■追悼ー角宮悦子

 あたたかい心のふれ合い/木原美子

 

■連載ー浪々残夢録

 貧しさの中の真・善・美ー良寛と現代/持田鋼一郎

 

■連載ー時言・茫漠山日誌より

 懐かしのコロンビア!/福島泰樹

 

■連載 メロディアの笛Ⅱ 白秋の昭和/渡英子

 

■連載ー短歌の近代 原阿佐緒の『涙痕』を読む/島内景二

 

■連載ー編集者の短歌史 七〇年代半ばの動向/及川隆彦

 

◉今月の新人ー作品5首 かなしみ、一滴/大石真由香

 

■今月の視点 情報を食う/宮原勉

 

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

 

■新刊歌集歌書評

 松永智子歌集「川の音」/古谷智子

 渡辺松男歌集「雨る」/柳宣宏

 「モンキートレインに乗って 」/内藤明

 山本登志枝歌集「水の音する」/滝下恵子

 山田航歌集「水の羊」/岩内敏行

 田中徹尾歌集「芒種の地」/江戸/雪

 梅本武義歌集「仮眠室の鳩」/藤島秀憲

 小宮山玉江歌集「葡萄棚の下で」/秋山周子

 

 浜谷久子歌集「風笛」/五十嵐順子

 

■作品月評ー五月号より/沢口芙美

■評論月評/田中教子

■全国〝往来〟情報

■編集後記

 

表紙画/高橋千尋

 

本文カット/浅川 洋

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逸見悦子『野あざみ』

 

 

荷を送り発ちし子の部屋広々と三月のカレンダー風にゆれおり

 

すべてキャド駆使する職場になりし今われと製図台細々残る

 

花蜘蛛のいつしか傘の内側に止まりて共に参道下る

 

菜の花の黄色封じて送りくれし母よ彼の日よ今に抱きしむ

 

リズム良き足音駆けゆく窓の下あれは五分刈り青年の音

 

 

明け番の夫の挿したる野あざみの位置整える夜の食卓

 

 

逸見さんは平成三年に「歌と観照」に入会し、平成七年に新人賞にあたる、「歌と観照社賞」を受賞した。「野あざみ」は、おそらく作者の好きな花。山野にも郊外にも見られるが、紫の花の色はさえざえとして、野の花の強い生命力を感じさせる。

五十嵐順子・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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南條暁美『往き帰る』

坂道の角を曲がれば弟の生れし家なり馬酔木が匂ふ

ページ繰る記憶残して返り来ず亡き弟に貸したる詩集

六歳のわが目に被爆の天主堂煉瓦の浮遊してゆくごとし

梯子のびて若き男が赤き玉を拭きはじめたり風の交差点

好きな場所選んで人は皆ゴビに葬られるとふ広大な墓所

終電の遠く過ぎゆく音のして生きる日々とは往き帰ること

 

「旅が私の人生そのもの」と南條さんはいう。その旅とは、自らの来歴をたどる旅であり、歴史を遡る旅である。さらには人間の生死が見えわたるような場所への旅であろう。                 

 

小林幸子・解説より

 四六版上製カバー装 2500円・税別

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安藤直彦『佐夜の鄙歌』

 

夏さればきよら流れの滑石(なめいし)にわれは鮎釣るその床石に

かたくり山に雪は明るく降りながらわれは来たりぬ咲くとなけれど

竜胆は平に添へてあるものを挿しのべてほそく鮎ほぐす指

ひさかたの光に音のあるごとく石をうちつぐ雪解のしづく

人の死をかなしびきたるわが(なづき)をひとゆすりせり朝の地震(なゐ)    

 

鄙に在っては、山川草木、鳥虫魚たちとの交感にあそび、

時として、産霊の神々に言問いながら、

伝統詩型の流麗な調べに、個と普遍の歌世界を喚び込んでやまない。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

 

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恒成美代子『秋光記』

せくぐまりおぼつかなくも生きてゐる母とパンジー風にふるへて

そのやうにしか生きられぬ秋の虫 鳴くだけ鳴いて静かになつた

むつのはな耀ひ母を車椅子に乗せて詣づるうぶすな神に

背伸びして秋の光に手を伸ばすけふのわたしを(ねぎら)ふやうに

 大三角見しことメールに発信し、しんじつ遠し息子はとほい

 

悲しむために生まれたのではない。

目に映る風景はいつもやさしい。

筑紫博多、筑後八女、そこに暮らす人々。

透明な秋の光の中、すべてが穏やかにそよぐ。

 

 四六版上製カバー装 2500円・税別

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おの・こまち『ラビッツ・ムーン』

 

水のようなドレスが着たい月の夜 光目指して烏賊昇ります

 

手合わせて水汲み運ぶおさな子の砂の穴いつ満ちるのだろう

 

卵割る指の加減を知らなくて殻は孵らぬいのちと交じる

 

脚本に「ああ」と書くのは楽しくて「ああ」という声一人一人の

 

空見上げ飛びたいウサギの耳は羽ソソラソラソラ月にかえろう

 

あをによし奈良の都の万緑に劇団ひとつ立ち上ぐる君 前登志夫 

 

月のウサギよ跳ねてごらん。

暮らしの隙間のメルヘンを物語るように、

定型という小さな楽器が演じ始める。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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三井修『汽水域』

 

 

 

 

 

バーボンの水割りふふめば北溟を一人ボートに()く心地する

 

屋上に見下ろす地には試歩の人それに付き添う人のしずけし

 

抒情詩(リリック)叙事詩(エピック)鋭く交差するアラビアなりしか 若く旅しき

 

一瞬といえども我はしかと見つ翔びゆく蜂の垂れいる肢を

 

 

浅き瀬を腹擦りながら上りゆく魚らは今日を婚姻の色

 

 

 

やわらかな言葉、おだやかなしらべ。

 

社会や生活の現実を真摯に見つめ、身めぐりの自然に心寄せながら、

 

この定型の過剰を削ぎつつ詠う。

 

いまだ見ぬ美の高みへ、そしてたましいの深みへと向かう孤高の翼!

 

  

A5版上製カバー装 2800円・税別

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今川美幸『雁渡りゆき』

これの世に抱かるるための髪を梳くたちまち髪さへ咆哮すらむ 

みづからは輝くはなし裸身こそ盛装なればすずやかに佇つ

わが裡にひとひらの(こう)あらざれば恋あらざれば生きざらめやも

耳はもつともあとに死すとぞ この夜更け死にきれぬ耳あまた浮游す

訣れいくつ重ねきし身をあらあらとひき寄せて詠む うたは恋歌    

火の酒を口移されぬ たましひの冥き韻きを雁渡りゆき

 

かなしみをこそ詠え。多くの死者たちとの和解のために。

うたは恋歌がいい。雪の夜に沈み、青空に抜けていくしらべとともに。

やわからな言葉と思念の深さとで幻視する世界が闇の向こうで輝き始める。

 

四六版上製カバー装 2300円・税別

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金子愛子『花の記憶』

エスペラント語研究所とある坂の上陽の当たる窓常に閉ざせり

(かほ)のない千代紙人形買ひて終る愛にとらはれし日々を旅して

呟きのごとく近頃口ずさむ「捜しものはなんですか」

勤め先変はりひと月通ふ街「花」とふ小さき茶房覚えぬ

高層のマンション一面に朝日差し当り前のやうな平穏があり

 

長い歌歴をもつ金子さんの歌には、秩序立った端正さと無秩序の愉しさがある。都市生活者としての嘱目詠、家族詠、旅行詠など、その幅の広さはそのまま人生の充実を想わせる。反面、やり直しのきかない人生の隙間を埋めるように愛を詠う。甘さも苦さも切なさも知り尽くした愛子さんの、初々しくもこくのある人生讃歌である。      (佐藤孝子)

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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十鳥敏夫『古歌の光芒』

なぜ、歌を詠むことが古典の世界に立ち返ることなのか。

万葉集、家持や防人の歌、そして西行や芭蕉、良寛の世界。

真摯に情熱を傾けて綴った、この作者のライフワークとも呼ぶべき一書から、

悠久の歴史の山河を越えて響いてくる古典という木霊を聴くにちがいない。

 

*主な内容

 

『万葉集』防人の歌ノート

越中の大伴家持

『万葉集』嗤笑歌を読む楽しみ

小野小町の花

西行の花・拾遺

玉のを柳

西行の鐘

憂愁の藤原良経

『梁塵秘抄』を楽しもう

源実朝『金槐和歌集』ノート

芭蕉の言葉『三冊子』を読む

花ぬすっと良寛

 

四六版上製カバー装 2800円・税別

 

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永谷理一郎『忘れ物を取りに帰ろう』

忘れ物を取りに帰ろう 敗戦後の無限に開けた青空のメモを

原爆が昭和史を分けた アメリカではエンゼルと呼ぶサタンの花束

銀座にはママたちの夢が棲んでいた 沈んで浮いて消えた夢たち

メビウスの軌道がそっと用意され 平和の顔した戦争がくる

絆には黒い絆もあるという 原発進めた絆くろぐろ 

 

反骨の気概とやわらかな心が凝視する世界は暗か明か?

この限りあるいのちを生きる者の眼に時代はどう映るのか?

するどい批評性をたたえた歌の数々と明快な論の展開。

八十五歳、人生の忘れ物を探し続ける颯爽とした口語短歌の旅人。

 

四六版上製カバー装 1500円・税別

 

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三輪良子『木綿の時間』

 

子を三人(みたり)生みて育てし歳月はたとへば木綿のやうなる時間

要介護5の<5>は鍵のやうな文字 春のとびらをこじ開けてくる

向きあひて(いん)(げん)のすぢ母とひく つういつういと日のあるうちに

虹のまた向かうに虹の立つ夕べ過ぎし人らの影を照らせり

崇福寺 正覚寺下 思案橋 サ行の(おん)の響きあふ町

 

家族をテーマにした一冊と言っていい。三人の子を育てた時間を「木綿のやうなる時間」と歌っている。木綿といえば、肌ざわりがよく、じょうぶ。通気性がよく涼しい、また厚手にすれば温かい。三輪さんはきっと「木綿のやうな」母親だったのだろう。

 

伊藤一彦・跋より

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石川浩子『坂の彩』

星凍る空垂直に降りてきてサッカーゴールさえざえとあり

若きらは初夏の大気を切り裂いて一、二、三、四坂登りくる

キッチンは春のみずうみ かの世から父来てゆらり釣糸垂れる

独り身は寂しくあるか花水木坂の上にも坂の下にも

 

眠る前のバニラアイスの一匙を口に溶かせり 天上は雪

 

坂――風景の坂、心象の坂、人間の坂。

その向こう側は誰も知らない空間。

たとえばそれが希望のみえる明るさであってもいい。

現実と虚構とのせめぎ合いが迫真のうた世界を鮮やかに彩る!   

 

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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山内嘉江『ガラスのはこ』

 

眠られず独り苛立つはくめいのあさがほは今ひらきつつあるか

腹這ひてSFよみゐる少年の羽ばたかむばかり大き耳たぶ

北風のくぐもりうなる如月のはげしきものぞ春来ることも

昨日来たる山鳩ならむひつそりと雪降る枝に胸をそらして

下葉枯れつつ花穂かかぐる藤袴むかしの秋にまた邂はめやも

 

『ガラスのはこ』の歌稿を手渡されて、翌朝に入院し、病室の床頭台に広げて目を通しながら、私は不思議の感に打たれた。そこに並んでいたのは、このひとが平生、見せない種類の歌が多かったからである。人間の頭はどういうつくり(・・・)になっているのだろう、私はその時、二十年前の揚羽蝶の紫を思い出したのである。               

光田和伸・跋より

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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浜谷久子『風笛』

ひとひらは南天の葉にひとひらはおさなの頭に春のあわゆき

らっきょうの匂いゆらゆら立ち昇るはつなつの蜂の傾いてとぶ

一寸の虫を見つけて聞いてみるこの長雨はいつ止むのかと

くさ原を舐めるがに飛ぶつばくろはこの地の誰より風を知る民

幾駅を歩いただろう京の街かたわらを大きく川は流れる

 

風がやむ。しばらくの沈黙。

若葉をひるがえし颯爽と風が吹き抜けていく。

そんな繰り返しの日常、そして風景と時間のゆらぎ。

自然の豊かなリズムに身をゆだねながら、

清澄な風笛のように、やわらかな歌のしらべが湧く。

 

四六版上製カバー装 2500円・税別

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鈴木香代子歌集『青衣の山神』

おうおうと月に物言う子を背負い銀の霜ふるバス停にたつ

ざりガニのもにょもにょ鋏ふりあげて新三年生なり四月の教室

ほとばしる水の野性を汲みあげて樹はしずかなり豊かに笑う

われを打つ子の()に一点悲のひかり慄然としてその悲を瞠る

海神(わたつみ)にむけて信遠古道あり昏きみどりをくぐりてゆかな

生まれきし者のさみしさ聞こえきて聴き始めたり通奏低音

青衣また雪衣まとえる山神(やまつみ)に花かかげつつ人は舞うなり

 

 

 「がるるる」と鳴く蛙、「ふさふさ」と牧場に眠る子馬、「がつがつと」とやってくる寒気、「きーんきーん」と冬星を研ぐ信濃の鬼……。私たち現代人が感得できなくなってしまった気配、聞こえない音、見えない動き等々を、オノマトペの向こうにすらりと浮かびあがらせる。青衣の山神の土地・伊那谷に生きて、我が子をうたい、山神の四季をうたい、教え子たちを豊かにうたう一冊。

 

                      佐佐木幸綱

 

 

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高山邦男歌集『インソムニア』

縁ありて品川駅まで客とゆく第一京浜の夜景となりて

温かい気持ち未来より感じたり今際のわれが過去思ひしか

わが仕事この酔ひし人を安全に送り届けて忘れられること

赤や青繰り返し点る夜の街のどこにもゐない点燈夫たち

赤信号ふと見れば泣いてゐる隣 同じ放送聞いてゐたのか

誰一人渡らぬ深夜の交差点ラジオに流れる「からたち日記」

 東京のタクシー運転手としての仕事の歌を中心に、斬新な着想、自在な用語で、東京という都市の現在をうたい、そこに生きる私たちの心の起伏をていねいにうたう。叙情詩としての短歌の可能性を果敢に追い求める作者の渾身の第一歌集。佐佐木幸綱・帯文より

四六版上製カバー装 2500円・税別

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短歌往来016年5月号

◉巻頭作品21首
平成挽歌/篠弘

 

◉特別作品33首

春の錯覚/百々登美子
オリンピアド断章/ 秋葉四郎

▪︎一ペジエッセイ
落書帖 土屋文明の歌/大島史洋
酔風船 おろかな夢/千々和久幸
花和尚独語 藤の花・紫の雲/大下一真

■評論 世紀の視座 歌の根柢/清田由井子

[特集]若菜摘む春のうた

 ◉作品八首+エッセイ
 舌を嚙む/安田純生
 花と青空/川野里子
 春の封書/桑原正紀
 三月生まれ/五十嵐順子
 母よ、乳母車押せ/田村広志
 かたかごの花/久々湊盈子
 北帰行/田中拓也
 こんなところで/南 鏡子
 かりんの芽/村松秀代
 薄くれない/嵯峨直樹
 樒の花/熊谷龍子
 ジャンプして 春/仲程喜美枝
 しろき噴泉/森山良太
 物思ひ/廣庭由利子
 たばこ屋橋/今井千草
 母の早蕨/山野吾郎
 一歳間近/鈴木英夫
 小さき水明り/永吉京子
 やちぶきの花/三澤吏佐子
 花はなし/佐久間章孔

◉作品七首
 焚火/岩田 正
 年月の声/大和類子
 すかすかの街/波汐國芳
 ほろびてゆかむ/大竹蓉子
 夜の電車/水野昌雄
 痕跡/香川ヒサ
 老々介護/田野 陽
 人工関節/市川正子
 樹の芽の呟き/山本 司
 袖振草/比嘉美智子
 文旦/野地安伯

◉作品八首
 本埜村の白鳥/東野典子
 冬の歌/西田郁人
 らふそく灯る/中村雅子
 妻/三平忠宏
 かすかに揺れる/冨岡悦子
 地球年代記/前田 宏
 めのう色の/村山千栄子
 去年を思ひ起せば/岩井鑛治郎
 親善/袴田ひとみ
 佐久間にて/鈴木利一
 輪/塚田沙玲
 みはらし/早野英彦
 日月抄/香川テル
 ジュラ紀の雨/武富純一
 夕影/高野しずえ
 呼出し/村山伀

■追悼堀江典子 西欧詩風味の歌/水城春房

 

■連載百人一首の歌人たち 懐旧と述懐と/久保田淳

■連載浪々残夢録 柳田國男と和泉式部/持田鋼一郎
■連載時言・茫漠山日誌より 夢の相続/福島泰樹
■連載メロディアの笛Ⅱ/渡英子

■連載短歌の近代 若山牧水と『伊勢物語』/島内景二

■連載編集者の短歌史 吉本隆明と寺山修司/及川隆彦
◉今月の新人作品5首 春と機序/睦月都

■今月の視点 湧き水/大久保壽美

■連載 歌誌漂流/鈴木竹志

■新刊歌集歌書評
福島泰樹歌集『空襲ノ歌』/三枝浩樹
山村泰彦歌集『六十余年』/小柳素子
花山多佳子著『森岡貞香の秀歌』/森川多佳子
大野道夫歌集『秋意』/松村正直
江戸雪歌集『昼の夢の終わり』/古谷智子
『みやざき百人一首』/大松達知
坪内稔典著『四季の名言』/酒井佐忠
山田航編著『桜前線開架宣言』/岡崎裕美子
寺尾登志子歌集『奥津磐座』/三原由起子
駒田晶子歌集『光のひび』/齋藤芳生
髙山美智子歌集『春を呼ぶ風』/志垣澄幸
岩井幸代歌集『アダムとイヴの手』/大熊敏夫
岡一輻歌集『狂詩曲』/森水晶
髙橋淑子書歌集『うつし世をともに在りたるもろもろへ』/前川斎子

■作品月評三月号より/沢口芙美
■評論月評/田中教子
■全国〝往来〟情報
■編集後記


表紙画/高橋千尋
本文カット/浅川 洋

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